書店に並ぶビジネス書、成功哲学書、自己啓発書、スピリチュアル書。 タイトルも著者も違うのに、読んでいると「あれ、これ前にも読んだような…」と感じたことはないでしょうか。
それもそのはずで、これらのジャンルの多くは、20世紀初頭から中頃にかけて書かれたごく少数の原典を、時代や切り口を変えて再解釈し続けているだけ、というケースが非常に多いのです。
今回は、その「大元」にあたる名著を、系統ごとに整理してご紹介します。
1. すべての源流「ニューソート運動」の三冊
19世紀末〜20世紀初頭のアメリカで生まれた思想運動「ニューソート(New Thought)」。 「思考が現実を作る」「与えたものが返ってくる」という考え方は、ここが出発点です。現代の成功哲学・引き寄せ系の実質的な原典と言っていいでしょう。
『原因と結果の法則』ジェームズ・アレン(1902年)
原題 As a Man Thinketh。「人は思った通りの人間になる」という一文に集約される、極めて短いが影響力の大きい一冊。多くの成功哲学書がこの一冊の焼き直しとも言えます。
『富を引き寄せる科学的法則』ウォレス・D・ワトルズ(1910年)
原題 The Science of Getting Rich。「思考には形を作る力がある」という前提のもと、富を得るための具体的な思考法・行動法を説いた実践書。後年の「引き寄せの法則」系書籍の直接の元ネタです。
『成功の鍵』チャールズ・ハネル(1912年)
原題 The Master Key System。潜在意識、集中力、想像力を使いこなすための24週間の通信講座として書かれたテキスト。体系性が高く、後続の多くの自己啓発プログラムの構成の雛形になっています。
2. 成功哲学の決定版
『思考は現実化する』ナポレオン・ヒル(1937年)
原題 Think and Grow Rich。500人以上の成功者への取材をもとに「成功の共通法則」を体系化した、成功哲学ジャンルの金字塔。上記のニューソート系の思想を、実業家向けに再構成した集大成とも言えます。ここから派生した本は数えきれません。
『この世で一番の贈り物』オグ・マンディーノ(1968年)
物語形式で成功哲学を伝える手法の元祖的存在。「ストーリーで教訓を伝える」という自己啓発書の定番フォーマットは、この系譜から広がっています。
3. 対人関係・実践スキル系の原典
『人を動かす』デール・カーネギー(1936年)
原題 How to Win Friends and Influence People。対人関係・コミュニケーション系自己啓発書のほぼすべての元ネタ。「相手の立場に立つ」「批判しない」など、今も語られる原則の多くがここに集約されています。
『道は開ける』デール・カーネギー(1948年)
悩み・不安のコントロールという、メンタル系自己啓発の源流。
4. 体系化・統合の名著
『7つの習慣』スティーブン・コヴィー(1989年)
上記のような個別のノウハウ書とは一線を画し、「原則中心」という考え方のもとに人格・習慣・組織論までを統合した一冊。多くの現代ビジネス書が、この本のフレームワークを部分的に借用しています。
5. さらにその奥にある「本当の源流」
上記の名著たちすら、実はさらに古い思想の焼き直しである、という側面があります。
- 『自省録』マルクス・アウレリウス(ストア派哲学) ― 感情のコントロール、今この瞬間への集中という現代マインドフルネス系の源流
- 『道徳経』老子 ― 「無為自然」の思想。力を抜くこと・逆説的な生き方を説く自己啓発書の元ネタ
- 仏典(特に初期仏教経典) ― 「執着を手放す」「今に集中する」という思想の源流
- 新約聖書(山上の垂訓など) ― 「与える者は与えられる」という思想の源流
つまり構造としては、
古代思想(ストア派・老荘・仏教・聖書)
↓
ニューソート運動(アレン/ワトルズ/ハネル)
↓
成功哲学の体系化(ヒル/カーネギー)
↓
現代の統合フレームワーク(コヴィーなど)
↓
現在書店に並ぶ無数の類書
という多層構造になっており、多くの新刊は、この階層のどこかを「今の言葉・今の切り口」で語り直しているに過ぎない、というのはかなり的を射た見方だと思います。
まとめ:この10冊だけ読めば十分説
- 『原因と結果の法則』ジェームズ・アレン
- 『富を引き寄せる科学的法則』ウォレス・ワトルズ
- 『成功の鍵』チャールズ・ハネル
- 『思考は現実化する』ナポレオン・ヒル
- 『人を動かす』デール・カーネギー
- 『道は開ける』デール・カーネギー
- 『この世で一番の贈り物』オグ・マンディーノ
- 『7つの習慣』スティーブン・コヴィー
- 『自省録』マルクス・アウレリウス
- 『道徳経』老子
これらを押さえておけば、書店に並ぶ大半の自己啓発書・成功哲学書・スピリチュアル書の「元ネタ」を把握したことになる、というのが今回の見立てです。逆に言えば、新刊を読むたびに「これはどの源流から来ているか」を意識すると、内容の理解も速くなり、無駄な重複読書も減らせます。


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