ホスティング企業が提供する自動インストール機能を使用することなく、WordPress を手動でサーバーにインストールすることで、より細かい設定制御やカスタマイズが可能になります。手動インストールには技術的な知識が必要ですが、サーバー環境の理解が深まり、トラブルシューティング時の対応能力も向上します。
本記事では、WordPress を手動でインストールするための全ステップを詳細に解説します。サーバー環境の準備から、ファイルアップロード、データベース設定、初期セットアップまで、初心者でも段階的に実施できるように説明します。
WordPress手動インストールに必要な環境要件
WordPressを正常に動作させるためには、サーバー環境が特定の要件を満たしていることが必須です。これらの要件を事前に確認することで、インストール失敗を防げます。
最初に確認すべき要件は、PHP のバージョンです。現在、WordPress が推奨する PHP バージョンは 7.4 以上であり、可能であれば 8.0 以上の使用が推奨されます。ホスティング企業の管理画面からサーバーの PHP バージョンを確認できます。古い PHP バージョンがインストールされている場合は、管理画面から新しいバージョンに更新することが可能な場合があります。
次に、データベース環境の確認が重要です。WordPress は MySQL 5.6 以上、またはそれと互換性のある MariaDB 10.1 以上が必要です。これらのデータベースシステムについても、ホスティング企業の管理画面から確認できます。
さらに、WordPress をインストールするディレクトリへの書き込み権限が必要です。FTP または SFTP でサーバーに接続し、ファイルをアップロードしたり、ディレクトリを作成したりできる環境が必須です。SSL 証明書がインストールされているか確認することも重要です。現在では HTTPS での運営が標準化しており、セキュリティ上も推奨されます。
最後に、メール送信機能の確認も行ってください。WordPress がパスワードリセット通知などのメール送信を行うため、ホスティング環境がメール送信に対応していることが必要です。
インストール前の計画と事前準備
WordPress の手動インストールを開始する前に、いくつかの計画を立てることが重要です。
まず、インストールするディレクトリパスを決定してください。サイトをドメインのルートディレクトリにインストールするか、サブディレクトリにインストールするかを決めます。例えば、example.com にインストールする場合はルートディレクトリ(public_html など)に、example.com/blog にインストールする場合は blog サブディレクトリにファイルをアップロードします。
次に、データベースの設定情報を準備してください。ホスティング企業の管理画面から、以下の情報を取得し、メモに記録します。
データベース名、データベースユーザー名、データベースユーザーパスワード、データベースホスト名(通常は localhost または 特定のホスト名)がこれらの情報です。新しいデータベースを作成する場合は、管理画面の操作でデータベースを事前に作成しておきます。
さらに、FTP接続情報も準備してください。ホスト名、ユーザー名、パスワード、接続ポート番号などが必要です。SFTP での接続が推奨される場合は、その設定情報も確認してください。
バックアップ計画を立てることも重要です。本番環境へのインストール前に、テスト環境やローカル環境での試行を検討することは、本番環境での失敗を防ぐ有効な方法です。
WordPressファイルのダウンロード
WordPress の公式サイト(wordpress.org)から最新バージョンのファイルをダウンロードします。
公式サイトのダウンロードページにアクセスし、「Download WordPress」ボタンをクリックしてください。ブラウザは zip ファイルをダウンロードします。このファイルは、WordPress のすべてのコアファイルを含んでいます。
ダウンロード完了後、zip ファイルをお使いのコンピュータで解凍してください。解凍すると、wordpress というディレクトリが現れ、その中に wp-admin、wp-content、wp-includes などのサブディレクトリが含まれています。
複数バージョンの WordPress がある場合、最新の安定版をダウンロードすることを推奨します。セキュリティアップデートが最新のバージョンに統合されているためです。
ダウンロード後、ファイルの整合性を確認することも可能です。公式サイトで提供される SHA256 ハッシュと、ダウンロードしたファイルのハッシュを比較することで、ファイルが破損していないか確認できます。
FTPでサーバーへのファイルアップロード
FTP クライアント(FileZilla、Cyberduck など)を使用して、WordPress ファイルをサーバーにアップロードします。
FTP クライアントを開き、接続情報を入力してサーバーに接続します。ホスト名、ユーザー名、パスワード、ポート番号をホスティング企業から提供された情報に基づいて入力してください。SFTP(セキュアな FTP)対応のクライアントを使用する場合は、セキュアな接続プロトコルを選択してください。
接続成功後、サーバー側のディレクトリをナビゲートし、WordPress をインストールするディレクトリに移動します。ドメインのルートにインストールする場合は通常 public_html ディレクトリです。
ローカルコンピュータ側では、解凍した wordpress ディレクトリの内容を表示します。wp-admin、wp-content、wp-includes などすべてのファイルとディレクトリを選択します。このときに、wordpress ディレクトリそのものではなく、その内容をアップロードすることが重要です。
選択したファイルをドラッグアンドドロップでサーバー側にアップロードします。または、右クリックメニューから「アップロード」を選択してください。ファイルサイズが大きいため、アップロード完了に数分から数十分要する場合があります。
アップロード完了後、FTP クライアントでサーバー側のファイルリストを更新し、すべてのファイルが正常にアップロードされたか確認してください。wp-admin、wp-content、wp-includes、wp-config-sample.php などのファイルが表示されていることを確認します。
アップロード中にエラーが発生した場合は、FTP クライアントの接続設定を確認し、パッシブモード(PASV)での接続を試みてください。一部のファイアウォール環境では、パッシブモードでの接続が必要な場合があります。
データベースの作成と設定
WordPress がデータ を保存するためのデータベースを作成します。ホスティング企業の管理パネル(cPanel、Plesk など)にログインし、データベース管理セクションにアクセスしてください。
「Create New Database」または「新しいデータベースを作成」といったオプションを選択します。データベース名を入力してください。通常、データベース名の前に cpanel アカウント名やプレフィックスが自動的に付加されます。
次に、データベースユーザーを作成します。ユーザー名とパスワードを入力し、新規ユーザーを作成してください。パスワードは十分に複雑なものを設定することが重要です。数字、大文字、小文字、特殊文字を含むパスワードが推奨されます。
データベース作成後、ユーザーに対してデータベースへのアクセス権限を付与する必要があります。管理パネルで、「Add User to Database」または「ユーザーをデータベースに追加」という操作を実行してください。
権限設定では、すべての権限(ALL PRIVILEGES)を付与することが通常です。SELECT、INSERT、UPDATE、DELETE、CREATE、ALTER、DROP などの主要な権限が含まれていることを確認してください。
データベース接続情報(データベース名、ユーザー名、パスワード、ホスト名)をメモに記録してください。次のステップで wp-config.php ファイルを編集する際に、これらの情報が必要になります。
wp-config.phpファイルの編集と設定
WordPress のコンフィグレーション ファイルである wp-config.php を編集し、データベース接続情報を設定します。
サーバーに FTP で接続し、アップロードした WordPress ファイル群の中から wp-config-sample.php ファイルを探してください。このファイルを wp-config.php にリネーム(名前変更)します。または、ファイルをダウンロードし、ローカルで編集後に再度アップロードすることもできます。
wp-config.php をテキストエディタで開きます。Windows のメモ帳でも開けますが、複数行の検索置換ができるエディタ(VS Code、Sublime Text など)の使用が便利です。
ファイル内から、以下の行を探してください。
define('DB_NAME', 'database_name_here');
define('DB_USER', 'username_here');
define('DB_PASSWORD', 'password_here');
define('DB_HOST', 'localhost');
これらの値を、データベース設定時に取得した情報に置き換えます。database_name_here をデータベース名に、username_here をデータベースユーザー名に、password_here をパスワードに置き換えてください。
DB_HOST はほとんどの場合 localhost で問題ありませんが、ホスティング企業の説明ドキュメントで別のホスト名が指定されている場合は、それを使用してください。
さらに、以下のセッション秘密鍵(Authentication Keys and Salts)の設定も重要です。ファイル内で AUTH_KEY、SECURE_AUTH_KEY などの定義を探してください。これらは WordPress のセキュリティを強化するための暗号化キーです。
define('AUTH_KEY', 'put your unique phrase here');
define('SECURE_AUTH_KEY', 'put your unique phrase here');
define('LOGGED_IN_KEY', 'put your unique phrase here');
define('NONCE_KEY', 'put your unique phrase here');
define('AUTH_SALT', 'put your unique phrase here');
define('SECURE_AUTH_SALT', 'put your unique phrase here');
define('LOGGED_IN_SALT', 'put your unique phrase here');
define('NONCE_SALT', 'put your unique phrase here');
これらの値を、実際の暗号化されたテキストに置き換える必要があります。WordPress.org が提供する「Secret Key Service」(https://api.wordpress.org/secret-key/1.1/salt/)にアクセスすることで、ランダムに生成されたキーを取得できます。
このページから表示されるコード全体をコピーし、wp-config.php ファイルの対応する部分に貼り付けてください。
編集完了後、ファイルを保存してサーバーにアップロードしてください。SFTP で接続している場合は、ファイルの保存後に自動的にサーバーに反映されます。
パーマリンク設定用の.htaccessファイル作成
WordPress のパーマリンク(URL 構造)を カスタマイズするために、.htaccess ファイルを作成し、URL リライトルールを設定します。
テキストエディタで新しいファイルを作成し、以下のコードを記述してください。
<IfModule mod_rewrite.c>
RewriteEngine On
RewriteBase /
RewriteRule ^index\.php$ - [L]
RewriteCond %{REQUEST_FILENAME} !-f
RewriteCond %{REQUEST_FILENAME} !-d
RewriteRule . /index.php [L]
</IfModule>
このコードは、存在しないファイルやディレクトリへのアクセスを index.php にリダイレクトするための設定です。WordPress がパーマリンクを正常に処理するために必須です。
ファイルを .htaccess という名前で保存し、FTP でサーバーの WordPress ルートディレクトリ(wp-admin、wp-content などが存在するディレクトリ)にアップロードしてください。
ホスティング環境によっては、.htaccess ファイルが表示されない場合があります。FTP クライアントの設定で「隠しファイルを表示」のオプションを有効化することで、ドットで始まるファイルが表示されるようになります。
ドメインのサブディレクトリに WordPress をインストールした場合(例:example.com/blog)、RewriteBase の値を修正する必要があります。
RewriteBase /blog/
のように、インストールパスを指定してください。
ファイルとディレクトリのパーミッション設定
サーバーのセキュリティと機能性を確保するために、ファイルとディレクトリのパーミッション(アクセス権限)を適切に設定します。
FTP クライアントでサーバーに接続し、各ファイル・ディレクトリを右クリックして「権限を変更」または「Change Permissions」を選択します。
WordPress が正常に動作するためには、以下のパーミッション設定が推奨されます。
通常のファイル(.php、.txt など)は 644 に設定してください。これは、所有者が読み書き可能、その他のユーザーは読み取りのみという設定です。
ディレクトリは 755 に設定してください。これは、所有者がすべての操作が可能、その他のユーザーは読み取りと実行のみという設定です。
特に、wp-config.php ファイルは 600 に設定することが推奨されます。これは所有者のみがアクセス可能という最も制限的な設定です。
wp-content ディレクトリ、wp-content/uploads ディレクトリ、wp-content/plugins ディレクトリは 755 に設定してください。WordPress がプラグインやメディアファイルを管理するために書き込み権限が必要です。
FTP クライアントで一括設定する場合は、ディレクトリを選択後、「フォルダ内のすべてのファイルに適用」というオプションを選択すると、下層のすべてのファイルに同じパーミッションを適用できます。
WordPress インストール画面でのセットアップ
ファイルアップロード、データベース作成、wp-config.php 編集が完了した後、ブラウザで WordPress インストール画面にアクセスします。
ブラウザのアドレスバーに、WordPress をインストールしたサイトの URL を入力してアクセスしてください。例えば、example.com のルートにインストールした場合は、https://example.com にアクセスします。
WordPress のウェルカム画面が表示されます。「Let’s go」というボタンをクリックしてセットアップを開始してください。
次のページでは、データベース接続情報の確認画面が表示されます。これまで wp-config.php に入力した情報が正しいことが確認されます。エラーメッセージが表示される場合は、wp-config.php の設定値を見直し、データベース接続情報の正確性を確認してください。
接続確認後、「Run the installation」ボタンをクリックします。
次のページでは、サイトのタイトル、ユーザー名、パスワード、メールアドレス、検索エンジンへのサイト表示設定などを入力します。
サイトタイトルは、サイトの正式名称を入力してください。後で設定変更できます。
ユーザー名は、WordPress 管理画面にログインする際のユーザー名を入力してください。デフォルトの「admin」ではなく、オリジナルのユーザー名を設定することがセキュリティの観点で推奨されます。
パスワードは十分に複雑なものを設定してください。大文字、小文字、数字、特殊文字を含む長いパスワードが理想的です。WordPress が自動生成するパスワードを使用するか、自分で作成できます。作成したパスワードは安全に保管してください。
メールアドレスは、サイト管理用として使用するメールアドレスを入力してください。重要な通知がこのメールアドレスに送信されます。
「Search Engine Visibility」という設定では、サイトが検索エンジンにインデックスされることを許可するかどうかを選択します。新規サイトの場合は、準備が整うまでインデックスを許可しない設定にすることが一般的です。
すべての情報を入力後、「Install WordPress」ボタンをクリックします。
インストール完了画面が表示されます。「Log in」ボタンをクリックして、管理画面へのログイン画面に進みます。
設定したユーザー名とパスワードを入力し、WordPress 管理画面にログインしてください。ダッシュボード画面が表示されれば、インストール成功です。
インストール後の初期設定と確認事項
WordPress のインストール完了後、いくつかの初期設定を実施することが重要です。
管理画面の「設定」メニューから「一般」を選択し、WordPress アドレスとサイトアドレスが正しく設定されていることを確認してください。これらはインストール時に自動設定されますが、ドメイン名やプロトコル(HTTP か HTTPS か)に誤りがないか確認が必要です。
パーマリンク設定も確認してください。「設定」の「パーマリンク」セクションで、URL 構造を選択できます。デフォルトの「プレーン」から、「日付と投稿名」「投稿名」などより SEO に適した構造に変更することが推奨されます。
新しいテーマをインストールしたい場合は、「外観」メニューから「テーマ」を選択し、デフォルトテーマから目的のテーマに変更してください。
プラグインのインストールは、「プラグイン」メニューから実施します。SEO プラグイン、バックアップ プラグイン、セキュリティプラグインなど、必要なプラグインを検索してインストールしてください。
サイトが HTTPS で運営される場合、SSL 証明書がインストールされていることを確認してください。ブラウザのアドレスバーにロックアイコンが表示されていれば、HTTPS が正常に機能しています。
ブラウザの開発者ツール(F12 キー)を開き、コンソールにエラーが表示されていないか確認してください。混合コンテンツの警告(HTTP と HTTPS が混在しているという警告)が表示される場合は、テーマやプラグインの設定を確認し、すべてのリソースが HTTPS で読み込まれるよう修正が必要です。
ダッシュボードの右上に「WordPress Updates」という通知が表示される場合があります。WordPress コア、テーマ、プラグインの更新が利用可能であることを示しています。インストール直後に最新バージョンへの更新を実施することが推奨されます。
トラブルシューティングと一般的な問題
インストール過程で問題が発生した場合の対処方法をご説明します。
「データベース接続エラー」が表示される場合は、wp-config.php のデータベース設定を確認してください。データベース名、ユーザー名、パスワード、ホスト名が正確に入力されているか確認します。
「パーミッション denied」というエラーが表示される場合は、wp-content などのディレクトリのパーミッションが 755 に設定されていることを確認してください。
「Headers already sent」というエラーが表示される場合は、wp-config.php または wp-content/plugins などのファイルに不正な空行や出力コードがないか確認してください。
インストール画面が表示されず、スタイルが崩れて見える場合は、mod_rewrite モジュールが有効になっていないか、.htaccess ファイルが正しく設定されていない可能性があります。
アップロード後、ブラウザが古いキャッシュを表示している場合があります。ブラウザキャッシュをクリアし、Ctrl+Shift+Delete(Windows)または Command+Shift+Delete(Mac)でキャッシュ削除画面を開いて、キャッシュを削除してください。
WordPress インストール後の定期的なバックアップも重要です。プラグインやサーバー提供のバックアップツールを使用し、定期的にサイト全体とデータベースのバックアップを取得してください。


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